文化の達人から聞く、小坂の魅力。
小坂の四季と人に魅せられて、この地でステンドグラス作りをしています。高瀬孝造さん

(1)ステンドグラスとの出会い

 ステンドグラスに出会ったのは、今からもう25年くらい前になるかな、誰かの個展のニュースをテレビで見て。名古屋で展示販売してるっていうの。僕が22~3歳の頃。で、「いいな、欲しいな」と思って見に行ったら、値段が40万とか50万とかで! それで作家さんに根掘り葉掘り聞いたの、「どうやって作るんですか?」とか。そしたらいろいろ教えてくれるの。「これはね、型紙作ってね、1個1個ガラスを切ってやるんやよ」って。話を聞きながら、その工程をずっと頭の中でイメージして、「これ、できるわ」と思って。
 それですぐに、名古屋にあるステンドグラスの問屋に行って、「初心者なんですけど、とにかく最低限必要なものを用意してください」って。ガラスカッター、はんだごて、初心者用の道具を全部揃えて、家でやってみたんやけど、ガラスが切れないの。何回やっても切れん。割れてしまうの。やっぱ最初は教えてもらわないといかんと思って、教室に行った。1年くらい通ったかな。あとは独学で、作っては並べて売って、しばらくはずっと、その繰り返し。

 なんかね、今思えば恥ずかしくなるような作品を、平気で売ってたな、「おれ、天才じゃないか」なんて思って…。まぁ、当時は愛知県にいて、本職が別にあってね。子どももまだ小さくて、狭いアパート暮らしやったから、作業台が外に置いてあってね、仕事から帰ってきてから、外で作業してたな。
 作業場がほしい、工房がほしいって、ずっと願っとってね。「上の子どもが小学校一年生になるときに家を買おう」と思ってね。そうなると当然お金を貯めないといけない。「工房、工房」と思いながら必死にお金を貯めて、ほんとに小学校の入学と同時に家を買って引っ越した。愛知県の半田というところにね。
 しかし人間は贅沢なもんでね、買った時は「夢のマイホーム!」と思ったんやけど、6年経ったら「狭い」と思って。まぁ、住宅の密集地で、向かいの家の人が階段を登る音も聞こえるようなところやったしね。
 もっと広い工房がほしい、じゃあどうしたらいいんだろう、そうだ、田舎だ、田舎なら広い家が手に入る、田舎へ引っ越そう、と。

(2)小坂への移住

 それから1年、いろんなとこを探して、ぶらっと小坂にきて、鹿山まで行って、「あぁ、なんかここ住みたいな」と思って。たまたま郷土館に行ったら、庄村清さんって人がいて、「すいません、ちょっと引っ越して来たいんやけど、空家ないですか?」って聞いたら、「おれんち今度新しく建てて、古い家が空いとる。貸してやるわ」って。それでもって「仕事ってないですか?」って聞いたら、「そこのキャンプ場で募集しとるから面接に行ってみたら」って、ポンポンポンと決まってまって。それで移住(笑)。

 とにかく何でも思った時点で口に出して言ってみる。「おれはステンドグラスをやる、おれは家を買う、田舎に引っ越す」って。何のあてもないんだよ、なんにもないんやけど、人から「おまえいつもそれ言っとるな」って言われるくらい、絶えずそれを口に出して、自分で自分を追い込む。そうすると自分も動かざるを得なくなって。面白いもので、そうすると大概は願いが叶ってきた。運が良かったんやね。

 小坂に来て、古い家を改築しました。最初はそれも自分でやりたいと思って、まずは型枠大工の修業をしました。
 ステンドグラスで食べていきたいんやけど、とにかく借金だらけやし、まずはってことで、大洞の人のところで働かさせてもらって。型枠大工を教えてもらったんやけど、その時点で初めて「おれって不器用なんだ」と思って(笑)。
 今までタンクローリーの運転手など一人仕事が殆ど、だからずっと一人、マイペースでやってきた。だから周囲と比べていかに自分が“ドンクサイ”かっつうことに気が付かんかったんやな。みんなで共同でやる、ヨーイドンでやり始める時に、おれはすごく遅いってことに初めて気が付いて。おれが3やる間に、みんなはもう5も6もやっとる。「おれってせかされる仕事は向いてない」と思った。結局、自分の家は建ててもらったんやけどね、大工さんに(笑)。

(3)マスコミの話題になった“和風”ステンドグラス

で、そこを辞めて、「やっぱりおれ、ステンドグラスの個展をやってみたい」と。20数年やってきて、あらためて自分がどの程度のものか試したいってのがあって。
 18歳から働いてきて、そこで初めて失業保険を使って半年以上休ましてもらって、その間に作品をどっと作って、それで郷土館で初めて個展をやった。
 最初に、たまたま中日新聞が紹介してくれたんだな。「和風のステンドグラスの個展が開催されます」って。そうしたら、「和風のステンドグラス」ちゅうのが、何かわからんけど注目を浴びて、新聞から雑誌からテレビから、マスコミが「もう何なんじゃ!」っていうくらい一斉に取材にやって来たの。みんなで申し合わせしとるんじゃないかっていうくらい、いっぺんに。ダメ押しはテレビ朝日の「人生の楽園」っていう番組。あれに取り上げられてすごいことになった。

 “和風”のステンドグラスを始めたのは、こっちに引っ越してきた14年くらい前から。
 愛知県にいたときは洋風のランプとかを作っとったんやけど、こっちに来たら和風の家ばっかりやろ? 純和風の家に、こんな洋風のランプ作ってもだめや。高山に行ったら骨董品やらあるし、それを使って、近くに陶芸をやっとる人もいたもんで、和風のいいデザインがあって、「これはステンドグラスに合うわ」と思って…。
 全国放送の「人生の楽園」っていう番組で爆発しちゃって、北海道から九州まで、250くらいの注文が3~4か月の短期間に一気に入って。それをせいぜい1年くらいで作っちゃえば全然もうかっとったんやけど、5~6年かけて作ったもんで、全然ダメやね(笑)。
 遠方のお客さんとはファックス、電話、手紙のやりとりで。「カタログないですか」って言われるので、個展のカタログを送って、その中から選んでもらって。でもね、一回作ったことがあるものをまた作るってのがイヤで(笑)。というか、申し訳なくて。カタログ見てもらって、「こういう感じのデザインがほしい」っていうのはわかるんやけど、「まったくこれと同じものを」っていうのはどうも…。
 5~6年かかりました、すべて作り終わるのに。それでも、250のうちでキャンセルがあったのはひとつ、ふたつくらい。それも、注文された方が亡くなってしまったとか、それくらいで、ほとんどの人が待っててくれた。
 しかしね、やっぱり商売がヘタなんかな、必要な生活費を稼ぐくらいの値段しか付けられなくてね。子どもが学校行くようになったりして、キツイ時もあったんやけどね。

(4)小坂の人と土地の魅力

 小坂はほんとに良い人ばっかり。いろいろ助けてもらった。本当にありがたいと思う。
 家を紹介してくれて、なおかつ仕事も。玄関に野菜が、もうしょっちゅう置いてあるし、よくいろんなものをくれる、こっちの人は(笑)。欲がないというか、いつも人のためを思ってくれとる気がする。

 それに小坂には四季がしっかりとある。それがいいね。冬は真っ白になるし、それで寒い冬からだんだんと暖かくなって春が来る実感があって、新緑から緑が深まっていって、夏には本当に濃い緑になって、それがパーッと紅葉になって、やがてまた雪が降って。
 自分は、ボーッと景色を見ているのが好きだから。四季がある、それがいいね。ここは。
 小坂で一番好きな場所はね、「ふれあいの森」の管理棟の横のベンチ、あそこでコーヒー飲むの、ボーッと。そこから町の方を眺める景色、あれが好きやね。

 僕はまったくの海育ちで、年がら年中、波乗りしたり、釣りをしたり、知多半島を一周したり、ほんとにずーっと海で遊んでたかな。
 タンクローリーの運転手になって、乗鞍スカイラインの頂上にコロナ観測所があるんやけどそのハッチを動かすための潤滑油を名古屋から運ぶっていう仕事があってね。朝6時くらいに高山のスタンドの方を乗せて、そこからずーっと乗鞍スカイラインをタンクローリーで登って行ったんやけど、そん時の景色が360度雲一つ無い、見渡す限り山で、感動してまった。その時初めて「山ってこんなに綺麗なんや」って思った、山で暮らすのも良いかもしれないって。

 最初、ほんとは軽井沢っていいなと思ってて。軽井沢の土産物屋が大好きで、一坪ショップていうのもいっぱいあったんで、「おれ、これでいいや」と思って。でも、軽井沢って都会なんよ。東京と変わらんくらい高いし、ダメやと思って。
 それに、名古屋からけっこう遠いやろ。名古屋の友だちにも来てほしいと思ってたから、ちょっと遠いなと思って。気楽に来れそうな距離っていうところもポイントで。友だちの遊び場としても使ってほしかった。小坂やったら名古屋から2時間半で遊びに来られるし。
 いろんな人が遊びに来るよ。うちに泊まってもらって2日や3日もいれば、すごく楽しんでくれて、満足して帰ってくよ。小黒川の釣り場に行ったり。冬はモンデウスとかアルコピアに連れてってあげたり。高山観光とかもね。
 高山や下呂っていうのは、愛知の人間にしてみれば、1年くらい前からちゃんと家族で計画して行くような所だったの。僕にしても下呂なんて三大名泉の一つすごい所で、高山も小坂に来てから初めて行った。名古屋の方では、うちの娘は「高山の学校に行ってた」ってだけで「すごいね」って言われて。やっぱ、近くて遠いとこなんやって。

 小坂ではね、みんなお互いの名前を知ってて。ここの人、絶対に聞くからね、「あんたは誰や、どこのもんや」って(笑)。「湯屋の高瀬っていいます」「湯屋? 湯屋の誰んとこや?」って、もう、自分の知り合いにたどり着くまでずっと、根掘り葉掘り、「あそこは空家じゃなかったか?」「ええ、リフォームして」「あぁ、そかそか~」って、とことん聞くの。わかるまで(笑)。だから、そういうのが苦になる人は無理かもね。
 子どもの同級生なんかでも、学校の帰り道なんかで会うと、向こうから声かけてくるもんね、「おじさ~ん」とか言って。親どうしがよく知ってるもんで、学校帰りでも、まずよその家にあがりこんで、ってことも多いね。
 うちも、けっこう子どもらの遊び場になっとったからね。勝手に入ってきとるし、工房の机なんかも落書きだらけ(笑)。でも、中学生になるとさすがに遠のくね。それはそれでさみしい(笑)。「おまえら、ちょっと前までよくここで遊んどったのに」って。

(5)ステンドグラスに込める、これからの思い

 ステンドグラスのことを言えば、やっぱり個展をやりたい。それはずっと頭があって、ちょっとずつ作品は残しとるんやけど、売らずに。でもやっぱり注文があれば先に作らないといかんし、その間にちょっと時間を見つけては作る、そういう感じ。
 今、僕の構想にあるのは、和風じゃあ無いけど、「等身大のスパイダーマンを2階の窓に飾る」ということ。もう頭の中では出来とるんやって。スパイダーマンはこう、体の模様が網の目になって、区切りがあるやろ、ちょっとずつ。それ、ステンドグラスでできると思って。パーツごとに作って張り付けて、組み立てて。パーツが細かけりゃ細かいほど、全体はきれいな形にできる。身体は赤の電気で、それでこう、手から緑のレーザー光線を空に向けてピーッと光らせるっていうのを、ずっと前から思っとって。う~ん、言っといて何やけど、大変そうやな。だけど、面白そうやろ(笑)。
 とにかく、口に出して行ってみることが実現の第一歩やからね。

前に戻る
  • 2010年小坂の味コンテスト レシピ着
  • ようこそ小坂へ
  • 達人と小坂を楽しむ 体験プログラムイベントカレンダー
  • 小坂の滝めぐり
  • NPO法人 飛騨小坂200滝
  • 飲める温泉 ひめしゃがの湯
  • ウッディランド 飛騨小坂ふれあいの森
  • 飛騨頂上御嶽山 五の池小屋
上にもどる