


炭酸泉に浸かったお客さんは、みなさん「すごく肌がすべすべする」って言われるね。「リンスがいらない」って言った人もいるよ。あと、髪の毛が薄くなった人でも、炭酸泉を地肌に練り込んでいくようにすると、だんだん増えてくるらしい。「嘘でしょ?」って感じやけど(笑)。
炭酸泉のお粥なんかも「体に優しいお料理ですね」って言われるね。お酒を飲んだ翌朝なんか特に、そういうのが食べやすいって。
うちらの旅館と比べて「ビジネスホテルの方が設備が良い」とかそういうふうに言われても、それを比較するのは違うんじゃないのって思うこともよくある。
逆に、お客さんの送り迎えを普通にさせてもらっとるけど、都会ではそういうものは全部、金銭勘定やもんね。毎年、平治ヶ原で蕎麦食べて、うちに泊まられる夫婦のお客さんがみえるんやさ。お酒を飲むと運転できんから、うちが車で乗せていってあげるんさ。それとか、雪の日に都会のお客さんがノーマルタイヤだったもんで立ち往生して、電話してきて「JAFを呼んでくれ」って言うから、「そんなもん呼ぶより、うちが行った方が早い」って、迎えに行ったんさ。
小坂の人間は、ここが不便なところやって分かっとるもんで、何でも協力し合おうとするんやな。そういうことはやっぱりお互いさまでな。都会とは違うよな、根本的な考え方がな。都会には、それを「いらんおせっかいや」と思う人も多々おるでな。
みんな「こだわりがない」っていうか、のんびりして、みんなお互いに「どうってことない」っていうか…こう、「気張らなアカン」ってことがないんやさ。自分を飾らんのやな。で、旅の人は、そういう飾らん雰囲気がゆっくりできるんやと思う。「田舎のおばあちゃんちに行ったみたいでのんびりできた」とか。
小坂は、暮らしてる人の魅力もあるけど、やっぱり自然を見るっていうのが一番いいもんな。四季がハッキリしてるし、それぞれに表情を変えるし。
それをさ、地元の男の人たちは「小さいときから見とるもんやから、今さら体験しなくてもわかっとる」って言われるんやけど、それに比べて女の人は、巌立に上がってみたりすると「すごい!」って、もっと素直に感動できるんやな。
「あかがねとよ」の滝つぼの水の色な、あれを「イタリアの“青の洞窟”より綺麗やった」って言われるお客さんがおられて。「すごい感動した」「海外の遠いところまで行かなくても、ここでこんなに綺麗なものが見られるなんて」って、「もっと宣伝すればいいのに」って言われたもん。
人と自然、何といってもそれが小坂の自慢やな。そんな小坂の良さを、本当は地元の人がもっと知らないといかんのやけどね。