文化の達人から聞く、小坂の魅力。
困ったときはお互いさま。小坂にはそういう思いやりがまだまだ残ってる。下島温泉 仙游館 女将 伊藤博子さん

(1)肌にも体にもいい炭酸泉

下島温泉 仙游館  炭酸泉に浸かったお客さんは、みなさん「すごく肌がすべすべする」って言われるね。うちらはそれこそ子どものときからずっと浸かっとるもんで、これが普通になってしまってるけど、確かにこのあたりの人はみんな「肌が綺麗ですね、白いですね」と言われるな。それこそ、朝ジャバッと(顔を)洗うだけで、あとは何にも付けんのやけど。ハンドクリームも何も付けとらんよ。
 「リンスがいらない」って言った人もいるよ。あと、髪の毛が薄くなった人でも、炭酸泉を地肌に練り込んでいくようにすると、だんだん増えてくるらしい。「嘘でしょ?」って感じやけど(笑)。名古屋とかにも「炭酸泉でヘッドスパ」っていうのがあるんやってね。今は、普通の水に簡単に炭酸が充てんできる機械があるもんで。うちらはもちろん天然の炭酸泉。
 炭酸泉のお粥なんかも「体に優しいお料理ですね」って言われるね。お酒を飲んだ翌朝なんか特に、そういうのが食べやすいって。お粥は、お米を洗うところから炭酸泉を使って、弱火でじわーっと、ぐつぐつ炊くの。自分らが食べるためにはわざわざ炊かんのやけどね(笑)。
炭酸泉  これもお客さんから聞いた話やけど、ある医学博士が書いた本に「小坂の炭酸泉がすごく良い」ってことが書いてあったそうやけど、その本と先生の名前、ちゃんと聞いとけばよかったなぁ…。いつも、ついついお客さんとのお喋りが長くなって、いろいろ忘れてしまうんやけど(笑)。でもね、お客さんとお喋りしてると、うちらが「え~っ! そんなことあるの?」ってびっくりするような話も聞けて、本当に楽しいね。

(2)「仙游館」はこんな旅館

 うちらの旅館と比べて「ビジネスホテルの方が設備が良い」とかそういうふうに言われても、何せ田舎やし、そこまで整えるのも難しいもんで。それを比較するのは違うんじゃないのって思うこともよくある。
 まぁ、こういう場所なもんでさ、お出しする食事も、朝は温泉粥とか湯豆腐とか、そういうものになるんやけど、以前、小さいお子さんを連れてみえた若いお母さんに、「子どもたちの食事にはウインナーとか付いてるのに、私の方だけこんなおかず、いややわ!」なんて言われて、「えぇぇ~」ってびっくらこいてしまってさ。その人、子どもたちも放置しっぱなしでさ、その辺をギャーギャー走り回っとるもんだから、うちが「だめだよ!」って注意したりね。それでも子どもたちは帰り際、「おばちゃーん!」なんて手を振ってなついてくれてたけど。

下島温泉 仙游館  食事で言うと、夜は飛騨牛を使った料理とか、飛騨の「納豆喰(なっとく)豚」を使った料理とか、地元のもの。春は山菜がたくさん採れるんで、それを天ぷらにしたり、川魚の塩焼きとか…地元のものをいろいろ組み合わせる。
 以前にお昼のランチをやってたこともあったんやけど、こういう場所まで来てハンバーグやら出しても喜ばれんわな。やっぱり、せっかく来たんやから、こっちの普通の料理、川魚の塩焼きやら山菜やら、そういうもんをゆっくり食べたいんやなと。

(3)飾らない小坂の人の気質

下島温泉 仙游館 女将 伊藤博子さん  小坂の人間は、みんな「こだわりがない」っていうか、のんびりして、みんなお互いに「どうってことない」っていうか…なんて言ったらいいのか、うまく表現できんのやけど…。
 お客さんに対してもそれがないもんで、小坂のおばちゃん達が喋るのはみんな小坂弁。そやから時々、話が通じんけど(笑)。うちの年寄りの女中さんが「お客さん、鍵“かっといて”やるで」って。「鍵を掛けておく」っていう意味なんやけど、分からんのやね。
 何か物をこちらに寄せてほしいとき、「それ、ちょっとたぐっとくれ」って言うと「はぁ?」って顔される。「それってどういうことですか?」って聞かれたりして、話題づくりにはいいのかもしれんけど、年寄りのおばあちゃん達は、それを標準語でなんと言うかが分からんのやから、答えられん(笑)。

 小坂の人は自分を飾らんのやな、結局。飾り気がないんや。で、旅の人は、そういう飾らん雰囲気がゆっくりできるんやと思う。クチコミのサイトとかでお客さんの声を見ると、「田舎のおばあちゃんちに行ったみたいでのんびりできた」とか。だから、都会的なホテルみたいに切り口上で「ここから先はお客様の方へ立ち入っちゃいけない」というサービスではない部分、それを一歩踏み越えたとこを求めてみえるのかなって。

 お客さんの送り迎えも普通にさせてもらっとるけど、都会ではそういうものは全部、金銭勘定やもんね。
 毎年、平治ヶ原で蕎麦食べて、うちに泊まられる夫婦のお客さんがみえるんやさ。お酒を飲むと運転できんやろ。だから平治ヶ原まで、うちが車で乗せていってあげるんさ。
 「はなもも」に行きたいってお客さんがいれば送っていって、用事が短ければ待っとって、長ければ「用が済んだら迎えに来るから電話して」って。
 それとか、雪の日に都会の人が根尾の滝の駐車場まで行ってな、それもノーマルタイヤだったもんで帰ってこられんくなって電話してきて、「JAFを呼んでくれ」って言うから、「そんなもん呼ぶより、うちが行った方が早い」って、迎えに行ったんさ。

下島温泉 仙游館

 お客さんが増えてきたら、そういうサービスもできなくなるかって? いやぁ、関係ないと思う。バブルの頃や、それ以前にもっとお客さんが多かった時代にも、全然気にせずそういうことをやっとった町柄やで。それがずっと受け継がれとるの。それこそ大昔から。そういう町なの。
 お客さんだけやないよ。町の人どうし、全然知り合いじゃなくても「おばさんどこ行くの?」「○○○や」「そんなら帰り道やで乗せてってあげるさ」なんて。すると乗せてあげたおばさんが袋からガサガサってお菓子を出して「これ食べて」、「そんなもんいらんさぁー!」なんてな(笑)。
 不便なところやってことが分かっとるもんで、何でも協力し合おうとするんやな。そういうことはやっぱりお互いさまでな。逆に自分に何かあった時には誰か助けてくれるやろう、みたいな。
 都会とは違うよな、根本的な考え方がな。都会には、それを「いらんおせっかいや」と思う人も多々おるでな。

(4)小坂のいいところ

小坂の自然  炭酸泉が目的で来られるお客さんも増えてはきたけど、まだメインはどっちかっていうと「自然を求めながらのんびり温泉に浸かる」っていう方が多いな。「小坂の滝めぐり」が「岐阜の宝もの」に選ばれてからは、滝を目当てに来る人も増えたね。

 昔はね、今とは違って林道があるだけで、「あそこに三ツ滝ってのがあるんですよ」って、木と木の間から覗いてたくらいだから。巌立を見るにしてもそう。昔を知ってる人はみんな、「随分変わってしまったな」って言わはるけど、良し悪しやな。普通の人でも行きやすくなったっていうことは確かやし、でも秘境を求める人にはちょっとアレかな、って。
 それこそ、昔の御嶽山に登る道路あるろ? 巌立への道をずーっと行って、橋を渡ってっていう道な。どんびき平には蛙がすごいおって、原八丁には蛇がすごいおったんやし。石垣の全部の穴から蛇が顔を出しとったって話がある。
 ストーンサークルも、まだそのまま残っとるやろ? 冨士神社のちょっと手前に、石がこう、丸く配置してあって、そのあたりから矢じりとかがいっぱい出てきたっていう。おそらく縄文時代あたりに、そこでお祈りを捧げていたんであろうと言われる場所が、下島にあるんやよ。

巌立  地元の男の人たちは、「巌立も知っとる、小さいときから見とる、今さら体験しなくてもわかっとる」って言われるんやけど、今見るとまた違うと思うんやけどねぇ。昔はあんなに綺麗に見えんかったもん。その点、女の人は、巌立に上がると素直に「すごい!」って、「分かってたけど来て良かったね」って。本当は地元の人がもっと良さを知らないとね。

 昔は、日本画を描いてる人がね、巌立の溶岩流の先っぽを見たところなんかを綺麗に描けるようになれば一人前って言って、そういう絵描きさんなんかも多かったけどな。だけど絵を描くのって時間がかかるやろ? 今はそんなふうに、休みをとってまで絵を描きに来ようっていう余裕のある人が少ないかもね…。
 だけど、川のところでキャンバス広げて描かはる人は今でもおられるし、御嶽山の向こう側の長野県の開田なんかは、絵描きさん多いよね。だからそういう方を対象にした企画も面白いかもね。
 去年の夏は、フォルクローレの音楽を演奏する人たちが来て、二晩泊ってここでやってたよ。巌立のとこでも2回演奏したって言っとった。南米の、アンデス山脈の方の音楽やろ? だからここの自然や環境と音楽がすごく合うんやろうな。
あかがねとよ  それと、「あかがねとよ」の滝つぼの水の色が、「イタリアの“青の洞窟”より綺麗やった」って言われるお客さんがおられて。「すごい感動した」「海外の遠いところまで行かなくても、ここでこんなに綺麗なものが見られるなんて」って、「もっと宣伝すればいいのに」って言われたもん。

 小坂は、暮らしてる人の魅力もあるけど、やっぱり自然を見るっていうのが一番いいもんな。四季がハッキリしてるし、それぞれに表情を変えるし。
 人と自然、何といってもそれが小坂の自慢やな。

仙游館
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