自然の達人から聞く、小坂の魅力。
小坂のきれいな水で健康に育った川魚は、臭みもなく本当においしいもんなんや。

(1)魚の養殖事業に就いた理由

 僕は生まれが飛騨高山で、学生時代は名古屋にいたんだけれども、卒業したら地元に帰り、魚の養殖の仕事に就こうと決めていたんやね。
 もともと飛騨高山というのは川魚もあまりいない土地でね、海から持ってくる魚は鮮度がよくない割に高価なもので、魚を食べるという習慣があまりなかったんやね。
 学生当時、たまたまテレビで魚の増殖技術についての番組を見てね、「これはいいな、飛騨にも魚を持って来れるな」と思って。
 それからは、養殖に関連するアルバイトをしたり、水産普及員もやったり、そんな中で、岐阜県淡水魚研究所から紹介されたのがここ、「小坂町淡水魚養殖漁業協同組合(以下、小坂淡水)」でした。

 養殖技術自体は50年ほど前からあるもので、飛騨は水がきれいだから、養殖場もけっこうあったんです。だけど成功している事例がなかった。病気が原因で。施設はあったけれども、技術が乏しかった。いくら水がきれいでも、ウィルス病が蔓延していて、100万個くらい卵をしぼっても1割も育たず、採算がとれなかった。
 僕が「小坂淡水」に入った頃も、アメリカから入ってきた感染病が日本全国に広まって、どんどん魚が死んでいた。それを防ぐには、汚染されていない水を使ったり、免疫が付くまで隔離飼育をすれば大丈夫なんだけど、当時一般的にはまだそういう知識も技術も十分じゃなかった。

(2)「いかに薬剤が危険か」を学ぶ

 そんな当時、水産庁が全国の各都道府県から一人ずつを集めて、養殖技術の講習を行なったんやね。動物の病気は獣医師が診るんだけれども、魚は分野が違うので、そのあたりの知識や技術が普及してなかった。そこでウィルス分離とか薬剤のこととか、カンヅメになって勉強したんです。

 そこで学んだことのひとつは、「いかに薬剤が危険か」ということ。
 例えば、魚が細菌の病気にかかって抗生物質を使った場合、その薬剤が魚の身の部分から抜けるのを待つ「休薬期間」というのがあって、「それを守れば出荷しても大丈夫」ということになっているわけです。
 確かに、魚を食べる場合、たいていは身の部分だけですよね。だけど本当は、骨や内臓での残留期間はもっと長いわけ。怖いのは、身だけじゃなく骨や頭まで丸ごと食べられる魚ね。薬剤が残ってる可能性がある。これはやばい、危ないぞと。そういうことを教えてもらって、これは考えないかんなと。

 そもそも、なぜ魚に投薬するかというと、病気にかかるからやね。それなら、病気にかからない魚を育てたらいいんやないかと。そこで「健康な魚づくり」を目指そうということになったんやね。

(3)川に魚を増やしたい

 魚をたくさん増やすために、生け簀や篭の中などで魚の子どもを育てて、大きくしてから収穫する。これが「養殖」やね。
 「養殖」をするための子どもをまず作ること、これを「種苗(しゅびょう)生産」といいます。以前なら5万匹ほどしかつくれなかったものを、「種苗生産」をはじめて一年目から30万匹、2年目は60~70万匹という実績を上げることができた。知識や技術があれば、そういうことが可能になるんです。

 「養殖」は、商売として育てた魚を売るってことが前提。
 その一方で「増殖」というのは、川に魚を増やすことが目的。
 「川に魚を増やしたい」という思いはずっと持っとる。そのためには、養殖でぬくぬくと育った魚を放流するよりも、天然に近い、自分で生きられる魚を放った方が増えるんじゃないかって。
 天然に近い魚をつくるには、極力、人間の手を加えないに限る。自然に放っておくのが一番なんじゃないかって。虫が来たり、池の藻を食べたり。そうしたら自然に淘汰されていく魚もいるだろうけれど、それもひとつの方法やなと。

(4)「川魚は臭い」なんてウソ

 「川に魚を増やしたい」という一方で、「安全でおいしい魚をたくさんの人に食べてもらいたい」という思いもあるんや。川魚を知ってもらって、本当に美味しいもんやっていうのを、もっともっと広めたい。
 うちでは、天然に近い魚を育てて出荷しているよ。味も違うよ。絶対にうちの魚でないとダメ、と言ってくださる料理屋さん、取引先もあるもの。

 みんな「川魚は臭い」とか言われるけれども、それは絶対違うんやって。
 小坂はまずは水が違う。PHが酸性で、植林もあんまりしていないし。水がきれいだから、魚の臭みもないんやよ。美味しさは、水のきれいさに比例するんじゃないかな。もっとも、要因はひとつだけじゃないだろうけど、あとは魚に聞いてみるしかないでね。だからずっと魚を観察してるよ。

(5)本当においしい魚を、消費者に広めたい

 健康な魚っていうのは、元気に泳いでおればそれで健康だということではなく、ヒレがしっかりしていることと、それに顔がいいこと。品がある顔っていうのがあるんです。
 天然に近い顔っていうのは、目玉がでかい。魚の成長は、歯と目玉で見るんだけれども、養殖では体をどんどん大きくさせるので、目玉が不自然に小さくて、体の成長についていってない。魚を見れば、「あ、これは養殖で短期間に大きくなったやつやな」って分かる。やっぱり、じわりじわりと時間をかけて育った魚は美味しいんやて。

 だけど、いくらいい魚を作っても、消費者が知らなかったら食べてもらえんからね。
 山奥でこつこつと魚をつくってきたけれども、それだけではいかんなと思って。いいものは、どんどんアピールして、みんなに知ってもらわなきゃいかんと。

 「川魚の美味しさを知ろう」体験会を開くのもいいかもね!
 アマゴでもイワナでも、開いて塩水につけて天日干しすると絶対に美味しいよ。夏場だったら2~3時間でできる。それを焼いて食べたら美味しいよ!
 あと、小坂でしか食べられない刺身とか。3枚におろすやり方も教えてね。体験学習として、すごく楽しい内容になると思うね!

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