


猟を始めてから、もう40年になるんかな。猟師を始めたのは、山が好きなの。山が好きなだけ。僕らの世代は、猟っちゅうか、小鳥を獲ったり、ウサギを捕まえて毛皮をとったり、田舎の子はみんなそういうのが好きやった。猟師になったのはその延長線やね。
「見切り」が大事なんや、猟は。足跡を見たりして、獲物が山におるかおらんかっつうのを見切るわけ。で、確実にこの山におるということになれば、5~6人で四方八方から巻いていく「巻き狩り」をしよる。「要所」があるの。通る道。その一番香ばしいとこについて、一人は追い役で入る、犬を連れて。
「捌き」はね、最初は出来なんだ。そんなの出来んよ。それでも若いうちにやらされて、そのうち慣れてくる。今、僕より下がおらんもんで、今でもずっとやっとるけど、本来それは新人の役目。いずれにしても、獲ったいのちは無駄にはしたくないからね。大事にしないと。いつもそう思っとる。
小坂ではね、今、猟師は6人になってる。一番年齢の高い方は73歳かな。去年までは80歳の人がおったけど、引退しちゃった。猟は、体力がいるもんでね。
今、害獣が増えて、イノシシとか鹿や猿の被害が多いでしょ。このままやったら、ほんとに野放しで大変なことになっちゃう。猟師の人数が足らんのが大きい。おっても年寄り、脚が悪いとか、腰が痛いとか。だから、どっかで後継者を育てていきたい。育てていかないかん。そう思っとるんやけどね。
滝のガイドもやらせてもらっとるんやけど、小坂の「お国自慢」はね、「日本一がたくさんあるよ」っていう話。こじつけかもしれんけれども。
まず御嶽山。日本で一番高い活火山は富士山やけど、実際に煙をはいてる活火山は御嶽山が一番。次の日本一は濁河温泉ね。温泉街としては日本一高いところにある。三つめはね、そのすぐ下にある高地トレーニングのグランド。1700m。日本ではあそこが一番高い。で、次は溶岩流の流れた距離。もうひとつは巌立のパワー、これらも日本一。勝手なこじつけでも何でもいい。
とにかく、小坂のいいところは、何といっても自然。山と川。そんな自然が大好きで、今でもその中で猟をして暮らしとるわけや。