自然の達人から聞く、小坂の魅力。
170年前の人の手で植えられた天保のヒノキの林を見守り育てていきたい
季節ごとに表情を変えながら、たくましく世代交代する様が見られる森

 徳川幕府の時代、ここ小坂は、非常に良質な木材を出すということで「天領」という幕府の直轄地とされていました。御殿やお城を建てるために、今からおおよそ170年前の天保年間に人の手で植えられた木が、今でもこのあたりに残っている。それが「天保林」です。
赤沼田の天保林は、木を植えた時期が証明できる古文書が残っているため、人工林としては日本一古いと認められています。
昭和37年に「学術参考林」として、さらに平成5年には「赤沼田天保ヒノキ植物群落保護林」として指定され、今後、この森には一切手をつけず、「人が手で植えた木がどうなるか」を永久に見守るということになり、僕ら林野庁がこの場所の管理を任されるようになった次第です。

 我々林野庁は「自然保護」の活動をする一方で、「林業」としての観点も大事に考えています。 植えられた木が手入れをされずに放置されると、モヤシのようになって密集するために、山には根張りの悪い木ばかり生えている状態になる。そのため、ちょっとした雨や風で木が倒れてしまい、崖崩れや土石流を引き起こしてしまう。
自然保護の話をしていると、山は木を切らずに放っておいて自然に任せるのが一番だという意見もありますが、少なくとも一度人間が手を入れた山は、継続的に手を入れ管理しなければ、間違いなく荒れ果ててしまうんです。

 自然保護という観点で我々が今一番気にかけているのは、今やほぼ絶滅の危機にさらされている「木曽ヒノキ」のこと。それを再び甦らせるのがこの天保林だと言われています。天保林には二次林、ヒノキの二世、子供たちがいい具合に育っている。
木が絶滅してしまうという事実は非常に残念ですが、その「絶滅する過程」を記録することも、学術的には非常に重要なデータになります。森は世代交代をします。天保林で生まれた若い木が、二次林としてまた育っていく、それをデータとして蓄積して、共存する形を残すことができればという思いから、岐阜大学と共同で研究を進めているのです。

 天保林には、年中いいところがあります。夏は新緑がきれいだし、いくらうだるような暑さの日でも、山の中に入れば涼しくて気持ちいいですし、冬の雪がしっとりと積もったのも良い。紅葉の時期は本当に綺麗ですけどね。葉が落ちてからも、落ち葉が積もってふっかふかになった地面を歩くのは楽しいし、木に余分な葉っぱがないので、とても見晴らしがよくなるんですよ。
林の奥に入ってみると、倒れた木の切り株に新しい子供が芽吹いています。これね、「倒木更新」とか「切株更新」と言いますが、屋久杉なんかは、ほぼこういう形で更新されますね。そういった様子が、こうして意外と身近で見られるんですよ。皆さん、ぜひ見に来てください。

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