自然の達人から聞く、小坂の魅力。
滝めぐりガイドの活動を通じて小坂を世界に誇れる場所に磨き上げたい。 熊崎 潤さん

(1)「NPO法人飛騨小坂200滝」の活動

 「小坂の滝めぐり」は、岐阜県が日本中、いや世界に向けても自慢できる観光の要素だということで、平成20年に「岐阜の宝もの」第一号に認定されました。
 僕が所属する「NPO法人飛騨小坂200滝」は、その「小坂の滝めぐり」を実際に案内するガイド集団で、僕はその中でも特に若手のガイドです…とは言っても30近いですが(笑)。

 そもそもは昭和56年、僕がまだ生まれていない頃ですが、「小坂の滝」の調査委員が発足し、3年7か月かけて小坂中を巡り、最終的に「小坂には200以上の滝がある」ということを一冊の写真集にまとめたんですね。
 第一回の調査に加わった方々、僕は勝手に「レジェンズ・オブ・オサカ」――小坂の伝説の人々と呼んで尊敬しているのですが、小坂の隅から隅までを知り尽くしていた上野銀松さんという方をはじめ、上野銀松氏、長瀬直正氏、細江有氏、安江基典氏、龍田慧二氏、早子忠正氏、岡崎幸八郎氏、山岸行男氏、桂川寛明氏、田立卓司氏、岡崎昌彦氏、田立泰彦氏、彼らは今の「小坂の滝めぐり」の原点を探し当ててくれた、まさに光を当ててくれた偉大な存在。中には、今もなお情熱は消えずに、NPOのメンバーとして活動されている方もいらっしゃいます。

 当時の調査は、「観光資源の開発」としてではなく「記録」という意味合いが強かったのですが、その後、和合正さん(※1)という、飛騨の谷を歩きつくした仙人のような方(笑)が商工会と組んで、観光資源としての「滝めぐりコース」の草案を作られたのです。
 次に、「そのコースを案内する人が必要だろう」ということで、桂川淳平さん(※2)と同級生の方々が中心となって立ち上げられたガイド集団、それが「NPO法人飛騨小坂200滝」です。

(※1)(※2)当WEBサイト「自然の達人」別項にて、ご両者のインタビューを掲載しています。

 では実際に我々はどのような活動をしているかといいますと、もちろんガイド、滝めぐりコースの案内がメインではありますが、他にもいろんなことに取り組んでいます。
 ひとつは「どんびき平の湿原」の修繕・回復事業。「どんびき」、これは「ひきがえる」のことです。でっかい「ひきがえる」がたくさん出る場所ということが名の由来なのですが、今はとても湿原とは言えない状態。そんな湿原を回復させる事業を、大阪から毎年修学旅行で来てくれる寝屋川中学校の生徒さんたちと一緒に進めています。
 それと、併用林道の維持管理、これは行政に頼るばかりでなく、自分たちで直せるところは直していこうという活動。
 また、小坂は地質学的にとても希少な土地ですから、「ジオパーク」としての認定を受けるための活動も行なっています。
 あとは、「小坂の滝めぐり」を後世に伝える、つなげていくために、ガイドの育成を目的とした講習も開催しています。それに地元の学校にお邪魔したり、岐阜県内各所や、時には名古屋などに出向きイベント等に参加して、我々の活動を伝える啓蒙活動も行なっています。

(2)地元民にこそ知ってほしい小坂の魅力

 先日、小学校で授業の時間を使わせてもらい、生徒たちに「小坂の滝」の話をする機会がありました。
 最初に子どもたちに「小坂の200滝、知ってる人~」って聞いたんですけど、誰も手を挙げる子がいなくって…。「道路に立てられてる滝めぐりの青いのぼり、見たことない?」って聞くと、なんとか「あぁ~」っていう反応が返ってくる感じ。まぁたぶん、それくらい地元の人にも知られていないっていうのが今の実情なのかなと思います。

 僕が「小坂の滝」を知ったきっかけは、たまたま親父の友人が調査員のひとりで、小さいころから滝のスライドを見せてくれてたんですね。「小坂にはこんなにいい滝があるんだよ」って。 でも、その頃は特に何とも思ってなかった。中学生になってからかな、たまたま家にあった写真集をひっぱり出してきて見たら、もう面白くて。面白いといっても、ただずーっと滝が載ってるだけなんですけど(笑)、それを地図と照らし合わせて、「ここ行けるかな、ここはどうかな」って、中学生なりにマウンテンバイクに乗って赤沼田とかに行ってみたり。
 だけど、本当に行けるところが少ないんです。写真集に載ってる中で2、3個かな、自力で見られたのって。全然行けない。みんな、それくらい険しいところにあるわけです。
 高校生になると部活が忙しくなって、受験もあるし…とは言っても僕の場合、スケボーばっかりやってましたけど(笑)。それで大学は名古屋の方に行きまして、その頃には山とか滝とか、まったく興味がなかったです。
 でもまぁ、ふとした拍子に地元に友だちを連れて来ると、みんなすごく感動するんですよね。「わっ!水道水がうまい!」とか「水、普通にむちゃくちゃきれいやん」って。僕らは当たり前に思っていることが、都会の人には全然普通じゃないんですね。見たことないものばかりで、それが本当にきれいに映る。
 逆に言えば、僕ら、やっぱりむちゃくちゃ恵まれすぎているんです、自然に。まぁ、その代り不便に思うところもありますよ、生活するには。

 思うに、やっぱり一度、地元から外に出たほうがいいんです。「めちゃくちゃいいところなんだな、ここは」というのが身に染みてわかります。本当に何にも代えがたいものが小坂にある。だから私は今ここにいます。わざわざ戻ってきた理由はそこです。
そして、中学校の頃ひとつやふたつしか行けなかった滝に、大人になって初めて自分の足で行くことができた。
 で、もう確信というか、とりこというか、取りつかれました、滝に。本当に、「小坂の滝の核心は奥にあり」で、それをいろんな人と見て共有したい。安全に行って、思い出を持ち帰ってもらいたい。
 その思い出というのは個々にいろんな形となって生きてくると思うんですよ。現代人は皆さん疲れてますから。都会で生活してみると、ほんと人間関係が煩わしかったり、普通に歩いていて「なんでこんなに人が多いんだ」とか「みんな歩くの遅いなぁ」とか、疲れちゃうんですよ。で、そういった疲れた心を、自然は本当に癒してくれるんです。

 僕は都会の生活に見切りをつけて、こうして小坂に帰ってきて、滝めぐりの仕事に就きました。 この活動を続けていくことによって、地元の人にも滝のことをもっと知っていただいて、もっと小坂を自慢していただけるようになればいいなと思っています。
 それとやっぱりね、将来的には働く場所としての選択肢が小坂にもあるように、誰もが「小坂は林業で有名、滝で有名」って言うくらい、そういうレベルまで引き上げるのが僕らの仕事だと思っていますし。

 結局、「観光」って水商売のようなところもあるじゃないですか。「瞬間的に盛り上がればそれでいい」みたいな。そうじゃなくて、仕事として考えるならなおさら、何かしら後世に残していく、つなげていくことが大事だと、僕は思っています。
 僕の子ども、名前は渓人っていうんですけど、彼らの世代が大きくなって、「小坂の滝めぐり、すごいんだよ。一緒に行こうよ」って外から友だちを連れてきてくれて、その時に僕がまだこの仕事を続けていられたら最高だな。

 

(3)「小坂の滝めぐり」の魅力

 ここからは具体的に「小坂の滝めぐり」の魅力についてお話ししましょうか。
まずは、「小坂の滝」と切っても切れない関係にある、「御嶽」。今から五万四千年前、御嶽がドン!と噴火して、溶岩が流れたわけです、ドロドロと。これを溶岩流と言います。これは今でも確認できます。御嶽山があって、そこから約16キロ下流まで平らな台地がずっと続いている、これを溶岩台地と呼んでいます。溶岩が流れた後、冷えて固まって、そこに木が生い茂っているんですね。そこには、兵衛谷といって、「日本百名谷」に数えられる日本でも有数の美しい谷があります。

 で、溶岩台地の末端、それが「巌立(がんだて)」です。ここがまさに「小坂の滝めぐり」の玄関口。この「巌立」を一望できる公園に我々NPOの小屋があって、訪れた方に「小坂の滝めぐり」の案内をする起点になっています。
 この巌立には、石の柱のようなものがズラズラッと並んでいる。これを柱状節理と言います。最初は水あめのようだった溶岩流が冷えて、そうした六角柱の柱状に固まったのです。これが、縦に割れれば直線状、垂直に割れると蜂の巣のような断面になりますので、場所によっては亀の甲羅みたいな岩がずっと続いている光景が現れたり、いろんな表情を見せてくれるのです。
 中には、この柱状節理が橋のような形状になって架かっていて、その下を滝が流れているという、非常に珍しい光景もあります。ここは「龍門の滝」と呼ばれています。

 小坂には、落差5メートル以上の滝が200以上、それ以下のものも合わせると、おそらく500以上もの滝があるんじゃないかと言われています。本当に日本一、滝の多い町です。我々はそこに14種類の「滝めぐり」コースを設定して、そのガイドをしています。コースは、体力に合わせて初級、中級、上級に分かれています。
 例えば、中級にあたる「あまつばの滝」コース。これは13メートルの高さがある滝なんですが、小坂には、こんなスケールの滝はざらにあります。「あまつばの滝」は、正面から見るとわかりますが、一文字型と言われる形容をしており、オーバーハングした岩壁から滝が落ちている。そのため、滝の裏側に人が立てるのです。おもしろいでしょ、自分の目の前を水が落ちていく。
 さらにこのコース、「なめ床」と呼んでますが、谷幅いっぱいに、つるりとしている岩の上をさーっと水が流れていて、その上を延々と歩いて行けるという。非常に気持ちのいいところです。
 他にも本当にいろんな滝があります。そして、ひとつひとつがまったく違った表情を持っています。

 冬のシーズンにも、滝めぐりの試みを行なっています。冬には、見事に全面凍結した美しい滝の姿が見られます。
 だけど小坂では、普通に立っていられないくらいに雪が積もりますね。濁河温泉のあたりで、積雪がだいたい1メートル80センチ。普通の身長であれば、ズボッと入っちゃいますね。どうすると思いますか?
 冬の滝めぐりは、手作りの「かんじき」を履いて行くんです。「和かんじき」、「わかん」という履きもの。これを履くことによって浮力が生まれて、それほど沈み込まずに立って歩くことができると。冬の滝めぐりの必須アイテムです。
 そしてこれ、実は自分で作るんです。素材となるヒノキの枝は、NPOのおじさんたちが山から切ってきて、それを参加者が自分で切って曲げて作る。

 夏には、大人の冒険、沢登り。冬とは一変して、ウェットスーツ、ライフジャケットを着て、きれいな水の中に全身を浮かべてみたり、滝に打たれて修行してみたり、ロープを付けて滝に登ってみたり。
 「小坂のきれいな水を全身で楽しみたい」と、都会から来たお客さんはやっぱりそういうことを望んでいる方が多いものですから。

(4)より多くの人に「小坂スタイル」を

 小坂には、きれいなものがたくさんある。それにいろんな芸達者、達人が小坂にはいます。それらの要素をいろいろと掛け合わせて、コラボレーションすること。そこに「小坂スタイル」が生まれるわけですね。それが、私たちが貫いていきたい「小坂スタイル」、滝を中心とした「小坂スタイル」です。

 小坂に来ていただけたみなさんは、すごく満足してくださって、中には本当にコアなファン、リピーターになっていただける方が多い。
 いつも「ありがたいな」と思うのは、そういった常連さんの存在ですよね。何か企画を立ち上げて、呼びかければほぼ100%の割合で来てくださるっていう、コアなリピーターのみなさん。
 しかし裏を返せば、そういった「常連さんに支えられてる」っていう怖さはありますね。もっと、一般的なファンの裾野を広げていくことが必要だと強く感じている。
 そこで例えば、コアなリピーターのみなさんが“小坂の良さ”に投資してくれるような活動というか、仕組みを作れないものかなと。まぁ、ファンクラブのようなものでしょうか。それが今、目の前にあるやりたいことです。

 また、「小坂の滝めぐり」の良い面のひとつは、やはり我々ガイドをするNPOのメンバーが、すべて地元の人間であるということ。
 例えば他所にもよくある「体験ツアー」のように、あえて「地元の人たちと触れ合いましょう」なんて課題のように設けなくても、すでにガイド自身が地元の人間ですから。
 常連の方たちからも、「ガイドとのふれあいが楽しい」という声は良く聞こえてきます。我々NPOのメンバー、それはもう定年後のお年寄りであったりするわけですが、その“おもてなしの心”というか温かみが、うまい具合にマッチしてるんだなって思います。
 だから、そのへんをもっとうまく活かして、コアなファンに受ける“尖った”企画だけでなく、よりマイルドな、より多くの人に楽しんでいただける「小坂スタイル」というものがあるはずだと。

 我々の今後の展望と言いますか、野望、と言いましょうか、それは「滝めぐりを中心として小坂をもっと盛り上げていきたい」、そして「飛騨といえば高山だけじゃない、“飛騨小坂”を世界に広めていきたい」と、そう思っています。
そこは僕自身、ライフワークとして追及していきたいですね。

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